この出会いが奇跡なら-上-




こ、これって……


………まさかの運命?


奇跡なんかでは、ないと思う。


でも、運命をそうあっさり信じる程、あたしも馬鹿じゃない。



「ほら、次成宮」


自己紹介の事をすっかり忘れていたあたしは、担任に名前を呼ばれ、それにビクッと体が反応して、「は、はい…!」と思いっきりその場に立ち上がった。



思いっ切り立ったのは良いものの、机の足に弁慶の泣き所を直撃して、「…いったー!!」と大声でそう叫んでしまった。




あたしが叫んだ次の瞬間、どわっクラス全体が笑いに包まれる。


「ふ」


そんな中、隣で小さく噴き出す笑いが、あたしの耳に入った。


わ、笑った。今こいつ笑いやがった。



「成宮、お前もう座って良いぞ。良かったな、お前それでみんなに名前覚えてもらえて」



…担任は笑いながら、あたしにそう言う。


全然良くないんですけど。


というか、恥だよ。大恥かいたよ。

入学早々、恥かくってどうよ?どうなのよ?


こんなの絶対、あたしだけだ。




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