この出会いが奇跡なら-上-



一番最後の愛子が自己紹介を終えて、不意に「よし!」と担任が大きな声でそう言った。



何が「よし」なんだろう。



「これで、お前等の名前と顔全部覚えたぞ」


……ええっ?

早すぎない…?

ああ、だから“よし”って言ったのか。

く、くだらない。


「一番覚えやすかったのは成宮だな」


担任が笑ってそう言うとまたクラスも笑いに包まれる。


…あーもう、やめて。
これ以上恥をかかせないでくれ。



それからあっという間に時間が経ち、長い終礼が終わり、この日はこれで終わる。



あたしはそっと隣に目をやる。



本当に本当に…、あの春成斗だよね。


今更何言ってんだって思われるかもしれないけど、本気で信じられないんだ。


あたしの目の前に、今彼がいることが。




…じゃあ、あれかな?

彼がここにいるってことは、2年前助けてくれたあの他の3人もこの学校にいるのかな。


「ねえ、春成斗」


それがちょっと疑問に思って、隣の春成斗にフルネームで声を掛けた。


「…何でフルネームなんだよ」

「…え?じゃあ、春」

「違う」


……は?違うって何が違うの?


「違うって何よ」

「成斗」

「……え?」

何自分の名前言ってんの、こいつ。


「だから、成斗って呼べっつってんだよ」




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