この出会いが奇跡なら-上-
「え、ああ…ごめん。それおいしい?」
「ん、まあまあ」
「………」
言うならまずいかおいしい、どっちかにしろよ。
「お前」
「え?」
「もう帰れよ」
いきなり言われて、「何で?」とそう聞いてしまった。
「もう遅いから」
するとそんな言葉が、成斗の口からスラリとと返って来る。
それ、心配して言ってくれてるの?
……まさかね。
だけど、そう告げた成斗はまだまだしんどそうで、無理してると、それを強く感じた。
あんまり長居するのもよくないな。
「うん。じゃあ帰るね?無理しちゃ駄目だよ?」
「分かってる。………気ィつけて、帰れよ」
最後のセリフがすごく小さかったのにも関わらず、あたしの耳にそっと響いた。
ホントに心配してくれてるのかな?って、それに少しばかり期待してしまう。
「早く治してね!」
それだけ言って、成斗の家を後にした。