この出会いが奇跡なら-上-
……光輝だ。
1対4なんて、酷過ぎる。
光輝は何故かやり返さなかった。
ずっと殴られてるだけ。
平気な顔をしているだけ。
見ていてすごくつらくなった。
最後にドカっと大きな蹴りがお腹に命中する。
一瞬目をつぶってしまったあたしは、
「このヘンでいいだろ」
そう言った相手の声をかすかに耳にした。
すると相手は裏口から逃げるように、そそくさと出て行ってしまった。
あたしは急いで走って、光輝の元へと駆けつける。
「ねえ、ちょっと大丈夫!?」
あたしに気付いた光輝が、ゆっくりと顔を上げる。
「……うわ、桜。お前なんでこんなとこいんの」
「見に来たら、光輝がここで…」
「みっともないとこ、見られちゃったな」
いつもの可愛らしい顔で光輝がそう言って笑った。
…馬鹿じゃないの。
こうゆう時まで笑うんだから。
「…どうしてやり返さなかったの?」
「言われたんだよ、手ェ出すとこれ燃やすぞって」
光輝の手にしっかりと握られている物をそっと見つめた。
それは仲良し4人組みで写っている、一枚の写真だった。