この出会いが奇跡なら-上-



「この写真、俺が唯一持ってる大事な写真なんだ」

「俺が写ってるのなんて、これだけ」


光輝がそう言って、かすかに切なく笑う。


その笑いが寂しそうに見えて、チクンとあたしの胸が痛んだ。


「だからって無茶しちゃダメだよ。皆心配するし、そんな写真より、光輝には目の前に成斗達がいるんだしさ」


あたしがそう言うと、光輝は写真を見ながら小さく口を開いた。



「俺にとっちゃ、そんな写真って言うレベルじゃないんだよ、これは」

「ごめん、そうだよね。ごめんね」

「あ、謝るなよ!馬鹿みてぇ」

「ば…っ何よ!」

光輝は、はははっと笑って、その場に勢いよく立ち上がった。


「あ、そうだ、その顔じゃ目立つでしょ?あたしの家おいでよ。手当て、してあげるから」

「はあ?別に良いし。お前不器用そうだもん」

「あ、あたし器用なんだから!」

本当に?とでも言いたそうな、疑い深い目でじとっと光輝に見られた。




< 54 / 203 >

この作品をシェア

pagetop