この出会いが奇跡なら-上-
「あ、ちょっと待ってて」
「ん?うん」
入口に置きっぱなしだった重い食材を、両手で持ち上げて、光輝の元へと急いだ。
「お、おまたせ」
すると光輝が、あたしの手から2つの袋をひょいっと持ち上げる。
「この二つが重いんだろ。仕方ないから持ってやるよ」
そう言った光輝に驚いて、「ありがとう」とそれだけ伝えた。
「礼なんていらねぇし」
そうきっぱし言われたけど、あたしは直接、そんな光輝の優しさに触れた気がした。
「あれが、あたしの家」
家までもうすぐだってところまで戻って来て、戻ってくるまでの間、光輝はずっとのあたしの歩幅に合わせて歩いてくれた。
家が近付いて来るにつれ、ある一言をぶわっと思い出した。
『男一人の家に堂々と上がり込んで来るなんて、いい度胸してんじゃん、お前』
―――あの時の成斗の一言。