この出会いが奇跡なら-上-
優しい君-Kouki-
……正直、驚いた。
目の前に桜がいたこと。
大丈夫?と声を掛けてきてくれたこと。
……何で。
成斗達以外、
俺を気にかけてくれる奴なんて今までいなかった。
みんな知らんぷりだ。
何でだよ、俺に構うなよ。
「手当てしてあげる。その顔じゃ歩けないでしょ」って、俺にそう言ってくれた。
歩けないとか、そんな事はどうでもいい。
俺は誰に対しても優しく接するお前に、
少しだけ心がくすぐられたような感じがしたんだ。
くすぐられたって言うか、何て言うか、上手く言えないけど、優しさってものが久々に肌に感じた気がした。
……駆けつけて、大丈夫?と言ってくれた時から、きっと分かってた。
……お前は優しいって。
優しくすんな。
俺が俺じゃなくなるだろ。