この出会いが奇跡なら-上-
「分かった、さんきゅ。もう行って良いよ」
優しい表情で光輝がそう言うと、その子はそそくさと逃げるように去って行った。
「…やっと、分かったな」
「サッカー部の山下智樹君、だっけ?」
「それくらい分かれば十分だろ」
―――やっと、見つけた。
あとは山下君の言ったことが、本当に嘘じゃないのかを確かめるだけだ。
その後、あたし達は、迷うことなくサッカー部が練習しているグランドへと向かった。
「んで、どうやって呼ぶ?」
そう言う悠紀に、あたしは「まかせて」と力強く目の前の二人にそう言った。
体育館の裏で待っててと二人に告げて、サッカー部の顧問の先生に山下君を呼んでもらうように頼んだ。
その数分後、山下君があたしの元へやってくる。
「えっと、君は、」
「あ、成宮桜です。ちょっと話あるんで、来てくれませんか?」
そう言うと山下君はすんなり、「うんいいよ。」とあたしの言葉を受け入れてくれた。
――悪い事するような感じの人じゃない。
一瞬、心の中でそう思った。