この出会いが奇跡なら-上-
それでも何も言わない山下君に光輝は半ギレ。
「お前には口もねーのかよ?!ちゃんと喋りやがれ!」
光輝派山下君の胸倉を掴んで、そう言った。
「ちょっ光輝…!やりすぎ」
あたしがそう言うと光輝は掴んだ手を、小さく舌打ちしながらそっと下ろしてくれた。
ふぅ、と息を漏らすあたしに、
「ごめん…」
山下君が、小さくそれだけ口にした。
「やっぱ嘘言ってたのか。てめぇ」
「光輝、ちょっと黙ってて。あたしが話聞く」
あたしがそう言うと、光輝はおとなしくそれに従ってくれて、あたしはそっと山下君に向き直る。
光輝に任せると山下君が怖がりすぎて、ちょっと可愛そうなんだもの。
「どうして、あんな事言ったの?」
「…違う、僕の意志で言ったんじゃない。………頼まれたんだ」
「え?誰に?」
あたしがそう聞くと、山下君の口から、信じられない言葉が返って来た。
「…学年主任の、坂井先生に」