この出会いが奇跡なら-上-
―――あたし達全員、その場で耳を疑った。
「……嘘」
成斗を会議室へ呼びだしたあの坂井先生が…?
「……本当に悪いと思ってるんだ。春君の事、何も知らないのに、先生に乗せられてこんな事言って。どうしたらいいか僕自身、分からなくなって…」
「そ、そっか。ありがとう、正直に言ってくれて」
「いや、僕の方こそ本当ごめん。僕に出来る事があれば、何でもするよ」
やっぱり…この人、悪い人なんかじゃなかった。
最悪で最低なのはあたしたちの教師、坂井先生だ。
「お前、何で乗せられたの」
さっきとは違う優しい声で、光輝がそっと山下君にそう聞いた。
すると、それにゆっくりと山下君が口を開いて、
「先生にそうしないとこれから先、お前の未来なんてないぞって言われて…」
小さい声でそう言った。
お前の未来なんてない。か。
高校生になって、もう自分の進路とか夢とか決まってる人にしたら、それはきついだろうな。
「僕が直接嘘ついてましたって言うよ」
………え?
「ちょっと待って!そんなこと言ったら、山下君が」
「元々は乗せられた僕が悪いんだ。それくらい、どうって事ないよ」
………そんなの。
「待てよ」