この出会いが奇跡なら-上-
それから悠紀も教室戻ると言い出して、すんなりと教室に戻って行ってしまった。
……結構真面目ちゃん?
それから、二人きりになったあたしと光輝。
あたしはそっと、ついさっき思った事を光輝に話しかけてみた。
「優しい、お父さんだね」
「ん?ああ、気使ってるんだよ、あいつ」
「…気?」
「うん、俺んとこさ、小さい時に母親が死んで、親父はそんな俺をいつも心配してくれてたけど、仕事が忙しくて、一緒にどこかへ出掛ける事はもちろん、一緒にいることも出来なくて、ずっとばあちゃんと二人で暮らしてたんだ。そんな常両親が傍に居ない俺を可愛そうだとか思ってるのかは知らないけど、久々に会った時とか、すごく甘やかしてくれてさ、俺が不良に走ったのも自分の愛情が足りないせいだ、とか自分を責めて、俺が不良に走った事にも目を閉じてくれてる。学校では教師達以外、俺等の関係も内緒だしな。別に気なんて、使ってくれなくても俺は全然平気なのにさ」
そう言った光輝の顔は、悲しそうな、嬉しそうな、よく分からない表情をしていた。
「でもさ、きっとそう思っちゃうくらい、お父さんは光輝の事が大事なんだよ。うん。でも、………羨ましいな。そう言うの」
「……お前、親は?」
「親は外国へ仕事に行ったまま、帰って来ない」
「…そっか」
「うん。…よし!あたしたちも、教室もどろっか!」
「えー」