この出会いが奇跡なら-上-
「さしぶり」
あたしがチラリと成斗に目を向けると、小さ過ぎる声が、あたしの耳に響いた。
「…今、なんて?」
でも、空耳かもしれないから、もう一回そっと聞き返す。
「久し振りって言ったんだよ」
「あ…ひ、久し振り」
急にそんな事言わないでよ。
成斗の方をもう一回、チラリと見ると、
「…俺のために、わざわざ悪かったな」
小さい優しい声が、あたしの耳にそっと届いた。
「………っ」
その言葉に、胸がキュウっと締め付けられる。
当の成斗は、それを言った自分が恥ずかしくなったのか、顔が少し赤く染まってた。
………良かった。
成斗が退学にならなくて本当によかった。
神様に何回ありがとうと言ったのか、そんなの忘れるくらい、心の中で何回も何回もそう囁いた。