love bye love
やっぱりドアの外は寒くて、自然と足早に駐車場に向かう。
ヒロと私の身長差は多分20センチ以上違うから、歩幅も全然違う。
同じ“足早に”でも、どんどん進んで行ってしまうので、必死に追いかける私。
「どの車?」
その駐車場は割りと大きくて、沢山の車が並んでいた。
私の言葉に返事は無かったけれど、ピっと車から離れたこの場所でロックを解除した。
「あっあの車だ~」
パパっとライトが光り、ロックの解除を知らせていた。
綺麗に光る黒の車体。
「カッコいいね?」
そう言うと、一瞬ニヤっと笑って“どーぞ”とあごで合図した。
車で走ること30分。
夕暮れに染まった、見慣れた風景が近づいてくる。
なんだか不思議な1日だった。
すごくショックなことがあって、初対面の人に慰められて、今こうして送ってもらっている。
さすがに色々あったし、疲れたのかな・・・すごく眠い。
ゴシゴシっと目をこする。メイクなんて、大量の涙でとっくに取れてしまった。
お気に入りのパン屋さんを通り過ぎたのを見て、もう家の近所である事に気づく。
「あっ・・・そろそろこの辺で大丈夫です・・・」
「そ?」
ヒロはキョロキョロっと路駐が出来そうな場所を探し、公園横の広めの道路の脇に車を止めた。
「ホント、すっげー夕焼け綺麗だな・・・」
ちょうど坂のてっぺんにある私の家の付近は、とても眺めが良い。
毎日の夕焼けは綺麗だし、夏は近くの花火大会が見られる。
特にこの公園は、更に階段を上った上にあるから眺めが良くてお気に入りの場所。
っと言っても、それは小学生の時の話で最近は全然来てなかったっけ。
「でしょ?坂のてっぺんだから、ちょっと通学とかは不便だけど・・・この眺めが見れるのは特権なんだよねぇ~」