*エトセトラ*
「え…、和泉君…?」

お互い、まさかこんな所で出会うとは思ってもなく、しばらく驚きで固まった。


「モカ、こんな所で何やってんの…?」

「何って、麻美たちと女子会がここで…、それより、和泉君こそどうしてここへ?」

「俺はサッカー部の連中と…、っつーか、ここでメシ食ってたのか?」

「うん、まさか和泉君もここにいたなんてビックリ!」

同じ店にいたという偶然にさらに驚くが、こんなに賑やかで男だらけの店にモカがいたと…?

しかも女の子たちだけで。

その危機感のなさに、恐ろしさを覚える。こんな場所にモカを置いて帰れるはずもない。

即刻、連れて帰りたい。


「もう女子会は終わった?」

優しく問い掛けるが、心の中では早く連れ出したくてしょうがない。まだ終わってないと言われても無理やり連れて帰る自信がある。

もちろん、そんな思いにモカは気付いていない。


「うん、もう帰ろうって話してて。今トイレ行ってたの」

「ちょうどいい、俺も帰るから一緒に帰ろう。送るから」

「いいの?サッカー部のみんなは?」

「問題ない」

「じゃあちょっと待っててね。みんなに言ってくるから」

そう言ってモカが俺の横を通り過ぎようとする。

その視線の先にある場所は。


もしかして、あいつらが言ってた向かいの個室にいたグループって……


「モカ、ちょっと待て」

呼び止めると、モカがこちらにくるりと振り返る。

「和泉君?どうしたの?」

「モカたちがいた部屋ってどこ?」

「えっと、そこの…」

モカが指差した部屋は、間違いなく、俺たちがいた個室の向かいで…。

かなり近い場所にいたことにもまた驚くが、それよりも。


じゃあ、あいつらが誘おうとしていたのはモカたちだったってことか……?

もし、俺が気付かず帰っていたら、モカたちはあいつらに掴まっていたかもしれない。

そう考えると、ゾッとする。

後藤がいるから変なことにはならないと思うが、モカがあいつらに囲まれるのを想像すると…。

もちろん、心は穏やかじゃない。


「早く帰ろう」

思わずギュッと手を握った。

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