*エトセトラ*
そして、研修最終日の夜。明日やっと和泉君に会えると思って胸を躍らせていたその時に、突然の電話。


『悪い、モカ』

「……え?」

『マジでごめん。どうしても避けることができなかった』


なんと、急遽、お父さんの出張に同行しなければいけなくなったようで、会えなくなったという連絡だった。

和泉君がお父さんの仕事を手伝っているのは知ってるから、ワガママは言えないけど…


「明日は会えないの…?」

『ああ…、それが、明日もっていうか…』

「……も?」

『また、一週間…』

「一週間っ!?」

『海外出張で…』

「海外っっ!?!?」


聞いた瞬間、目の前がクラクラした。

一週間出張っ!?しかも海外って!!

そんなぁー!!

また一週間会えないのーっ!?

ガーンとショックを受ける私に、『マジで行きたくねえけど、親父の絶対命令で』と、和泉君は溜息混じりに言う。


「そっか…仕事ならしょうがないよね…」

本心とは裏腹な言葉。でも……


「……会いたかったなぁ」

ボソッと思わず本音が零れると、電話の向こうの和泉君がまたさらに盛大な溜息を吐く。


『モカ…、そういう可愛いことは会えるときに言って。抱き締められない俺の身にもなれ』

「なっ、何言ってっ…!!」

『とにかく。一週間後、帰ったらすぐ会いに行くから』

「う、うん…」


こうして、和泉君と会えるのは奇しくも一週間先延ばしになってしまったのだった。

< 122 / 210 >

この作品をシェア

pagetop