*エトセトラ*
和泉君と入れ違うように研修から帰ってきた私は、寂しさを抱えたまま大学に通っていた。

和泉君がいないと思うと、いつもの日常も心なしか色褪せたように感じる。

一週間以上会わなかったことなんて今までもあったのに、何でこんなに寂しいんだろう。

やっぱり、そばにいないって分かってるから…?

遠距離恋愛の人からみれば、鼻で笑われるかもしれない。ちょっと会えないくらいって。

でも、寂しいものは寂しいんだ。


「珍しく寂しそうねー。この姿を黒崎に見せてあげたいわ」

「麻美…」

からかい口調で麻美が言うけど、確かに、今の私には気力がなく腑抜けた感じだ。


「で、黒崎は出張からいつ帰ってくるの?」

「あと五日かな…」

「なんだ、もう少しじゃない」

「全然少しじゃないよ!まだあと五日もあるんだよ」

「まぁまぁ、そんなに怒らなくても。このモカがこんなになるくらいだから、黒崎はもっとヒドイだろうね」

苦笑しながら麻美は言うけど、実際のところ和泉君がどんな様子なのかは知らない。

寂しいって思ってくれてるかな…。そうだと願いたいけど。

私が研修に行っていたときは電話の様子から会いたがってくれているのは分かったけど、今回は海外だからろくに電話もできていない。

いつもメールですませている。しかも、和泉君のメールは普段から簡潔的だから、その文章から感情は垣間見えない。

もしかしたら、仕事が忙しくて寂しいとか思う暇もないのかも…。案外会えないことに慣れてたり…?


「はあぁー…」

相変わらずネガティブな思考が進んでいると、麻美が笑いながらたしなめてくる。

「そんな盛大な溜息やめなさいよ。帰国したらすぐ会えるんでしょ?」

「まぁそうだけど…。空港まで迎えに行くって伝えてるから」

「へぇ、モカにしては珍しく積極的ね」


帰国するのは日曜日の昼間だと聞いている。幸い大学も休み。

家にいても和泉君は寄ってくれると思うけど、少しでも早く会いたくて空港まで行くと伝えた。


用事が入っても絶対に迎えに行くんだから!


そう意気込んでいたのだけれど―――…


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