*エトセトラ*
ボサボサの頭に、よれよれのパジャマ。

ゆっくりとお風呂に入ることができなかったので、まともに体も洗っていない。

この一週間、部屋の掃除だってしていない。


……見られるの?これを?


や、やばいっ!!これはさすがにダメだ!!

時計にバッと目を向けると、ちょうどお昼の12時をまわるところ。

和泉君のことだから、悠長にお昼ご飯を食べてから来るってことはない。話しぶりから、本当に今から来ると思われる。

……てことは、早くてもあと30分後には来てしまう!!


こんなボロボロの姿のままで彼氏の前に出たくない。しかも久しぶりだというのに。

せめて最低限の身だしなみを整えるべく、急いでお風呂に入って、少しキレイめの部屋着に着替えて、家の中を少し片付けて……

30分という僅かな時間をフル稼働で動いた。

や、病み上がりの体には少々きつい…


もちろん、お化粧なんてする時間もない。ハァハァと息を乱しながら部屋の掃除機をかけ終わったところで、訪問を知らせるチャイムが鳴った。

き、来たっ!やっぱり早い!


急いで掃除機を片付け、玄関まで降りて扉を開くと――…



そこには、3週間ぶりに見る和泉君の姿。


「い、いらっ…しゃい…」

やっと会えた嬉しさと動き回っていた疲れで、息も上がり声が上擦っている。

久しぶりの和泉君だ…

恥ずかしくなって少し頬を染めると、和泉君は目を細めながら優しく微笑んだ。


「モカ」

いつもの声も、久しぶりすぎて胸がきゅうっと締め付けられる。

固まったままぽうっと見惚れていると、ゆっくり引き寄せられ、和泉君の腕の中に閉じ込められた。


「やっとモカに会えた」

苦笑まじりの声にコクリと頷き返すと、和泉君は少し体を離して私の顔を覗き込む。


「もう大丈夫なのか?しんどくないか?」

「う、うん、……大丈夫」


だけど、そんな甘い顔で見つめられると、逆に大丈夫じゃない。和泉君のせいで、ドキドキと胸の動悸が激しくなる。


違う熱に冒されそうだ。

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