*エトセトラ*
「モカ?マジで大丈夫か?なんか疲れてるように見えるけど」

「う、うん、本当に大丈夫、だから…」

さっきまで動き回っていたから、息が上がっている。風邪の影響だと思っているのかも。


「なんか髪も濡れてるし、汗?」

「ち、違うよっ!お風呂!お風呂入ってたの!」

「風呂?こんな時間に?」

怪訝な顔する和泉君に、あなたのせいで!と返すことなんてできず、「とりあえず、中に入って!」と家の中に引き入れた。


「今日は家の人は?モカの兄貴とか」

「今誰もいないの。両親も仕事行ってるし、お兄ちゃんも大学だし」

「………そう。で?体調はどう?」

「うーん、もう治ってると思うんだけど、念のため今日もお休みした方がいいって」

「そうか、安心した。何度か見舞いに来たけど兄貴に追い返されたからマジでひどいのかと」


…………え?見舞い?


「和泉君、来てくれてたの!?」

「ああ。心配だったし」

「お兄ちゃんそんなこと一言も…!!」

「だろうな。モカには会わせねえって言われた」

和泉君は苦笑しているけど、かなり衝撃を受けている。

お見舞いに来てくれてたなんて…!!お兄ちゃんのバカっー!!帰ってきたら絶対文句言ってやるんだからっ!!

お兄ちゃんへの怒りにわなわな震えながらも、和泉君を部屋まで案内した。


「和泉君も電話してくれればよかったのに!」

「モカ寝てるだろうと思って」

「でもっ、」

「まぁいいから、今こうして会えたし。それよりも――…」



そう言って和泉君は部屋の扉を閉め、私に向いてニコリと優しく微笑んだ。

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