*エトセトラ*
知らないと察した店員が、「電話されて聞きますか?」と言っているが、なるべく結衣には秘密にしておきたい。しかも、結衣は素直に教えてくれない可能性もある。

まいった…。
こうなりゃ…。


「すみません、手、貸してもらえますか?」

「え?…手、ですか?」

不思議そうにしている店員の手をとり、薬指をギュッと握った。


「あ、あの…お客様…」

店員がポッと顔を赤くしているが、そんなことはおかまいなしだ。



にぎにぎにぎ…。
うーん…結衣の感触と全然違うからいまいち分からねえが…。
結衣の指はもう少し細い。


「あなたより、1サイズ小さいものを」

「は、はい…」


ちゃんと聞いているのか、店員はポーッと頬を染めたまま、フラフラと奥のバックヤードに入っていった。


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