*エトセトラ*
叱られてしまった。

いい大人が情けない。


暴走しかけてた心をどうにか取り戻し、渋々といった感じで祭りの会場へと向かった。


「さっさと見て、さっさと帰るぞ」

「行きたいって言ったの先生じゃないですか…」

到着したばかりだと言うのに早く帰りたがる俺を、結衣は呆れ気味に見てくる。


確かに、提案したのは俺だが、こんな所に結衣を長居させるわけにいかない。


周りにいるすべての男たちが敵に見える。


「結衣、絶っ対に俺から離れるなよ」

「……こんなに掴まれてたら、離れようにも離れられません」

勝手に威嚇しているせいで、結衣の腰にしっかりと腕を回し、離れないようピッタリとくっつきながら歩いている。


祭り会場は、屋台が賑々しく軒を連ね、人で溢れている。普通に歩くだけでもかなりツライ。

できるだけ結衣を守りながら歩くが、時折、人にぶつかりそうになっている。


それが男とくれば、もうイヤでたまらない。結衣に触れていいのは俺だけだというのに。


やはり祭りに来たことに大きな後悔が押し寄せるが、ふと結衣を見下ろせば、キョロキョロと興味深そうに屋台を見つめている。


「結衣、何か見たいか?」

声をかけると、結衣は「うーん…」と難しそうな表情になった。


「見たいけど…人が多いから、いいです」

「いいのか?行きたいなら、連れてってやるぞ?」

「ううん、あの混雑した中には入りたくない…。それに、もう花火が始まりますよ?」


結局、人ごみ嫌いの2人なので屋台を見ることは早々に諦め、花火のため会場を移動することにした。








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