*エトセトラ*
花火がよく見える近場だともちろん大混雑しているので、少し離れた高台まで行き、空いているベンチに座った。

遠いけどここでも十分キレイに見えるし、人もそれほど多くない。穴場スポットだ。


「結衣、大丈夫か?しんどくないか?」

「ちょっと人に酔っちゃいましたけど、大丈夫ですよ」

わずかに微笑みながら返してくれたが、慣れない浴衣で、しかも結構歩いた。俺でさえ疲れたのに、きっと結衣も疲れてるに違いない。


少しでもラクにさせようと、結衣の頭を引き寄せて、肩に寄りかかるように凭れかけさせた。


「大丈夫か?」

もう一度聞くと、結衣は「……ありがとう」と、恥ずかしそうに微笑み返してくれた。



ああ……可愛い…。


早くもメロメロになりながら、調子にのって結衣の頭にキスを落すが、「先生!」とすぐさま注意された。


「……これくらい、いいだろ」

「ダメです」

もちろん、ピシャリと一蹴。

しかし、この状態で結衣を見下ろすと、浴衣のすき間から白い肌が胸元まで見える。


……やべぇ…。

ゴクリ、と思わず喉が鳴る。

またもや暴走してしまいそうなので、慌てて視線をそらした。

拷問だ…。早く連れて帰りたい…。


悶々とする心を抱えながら、結衣の肩をグッと抱き寄せていたら、ドーンと大きな花火が一発上がった。


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