*エトセトラ*
そして、あっという間に1ヶ月が過ぎ――…。


先生の誕生日が、いよいよ明日に迫った。

何をしてあげれば先生は喜ぶだろうかと、こっそり金一郎さんや志銅さんに相談してみたけど、「銀次が一番喜ぶプレゼントは結衣ちゃん自身だよ」と冷やかされるだけで、私が望む答えは何ももらえなかった。


結局1人で考えるハメになり、いろいろ悩みに悩んだ結果、いつものように先生の家で過ごすことに決めた。

手作り料理と手作りケーキで、2人きりでお祝いしてあげよう。

ささやかだけれども…。私には、それくらいしかできない…。


普段、先生とは外食が多いので、料理なんて作らない。なので、これだけでも私にとってはかなり大それたことだ。

もっといろいろしてあげたいけど、私にはサプライズ的なイベントを仕掛けるスキルを持ち合わせていないと自覚している。



あとは、プレゼントを買うだけなんだけど…。

これが、一番の難問。

何をあげればいいのか分からなくて、明日だというのに、まだ何も買っていない。


どうしようかな……。


身に付ける物をあげたいけれど、普段先生が身に付けている物はどれも高価なものだと分かる。

庶民の私が見ても品の良さが分かるほど。曲がりなりにも「お坊っちゃん」なんだろう。


相応の物をあげようと思っても、私のお小遣いじゃ手が届かないしな…。



うーん…うーん…。


この難問を唸りながら考えていたその時。



RRRRRR――…


先生からの着信を知らせる軽快な音が携帯から響いてきた。


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