*エトセトラ*
「何してんの~?銀次の誕生日なのに、こんな所でブラついてていいの?」

「あ、えっと、出張みたいで…会えなくなりました…」

不思議そうに聞いてくる志銅さんに落ち込みながら返していると、その横で金一郎さんが「あ」と声をあげた。


「そういや、あいつ今日出張だったな」

「マジで?こんな日に銀次が出張を入れたなんて、何か緊急事態だったわけ?」

「……いや、あいつのことだから、自分の誕生日絶対忘れてるだけだろ」

「ハハッ、まさかー」

金一郎さんの呟きに志銅さんが笑い飛ばしているけど、……先生ならあり得る。自分の誕生日、忘れてそうだ。

何が欲しいかと聞いた時も、全然気付いてなかったし。



「覚えてたら、あいつが出張なんて入れるわけないだろ。結衣ちゃんに祝ってもらえるのに。自分から祝えと催促するはずだ」

「確かに…」

納得している志銅さんと一緒に、うんうんと頷いた。

先生のことだから私に色々と催促するはずだけど、今日まで何も言ってこなかった。



「せっかくお祝いしようと思ってたんですけどね…」

ポツリと残念そうに呟くと、志銅さんがポンポンと慰めるように頭を撫でた。


「結局、何をしてあげる予定だったの?」

「えっと…ベタなんですけど、ご飯作って、ケーキ食べて、2人でお祝いしようかと…」

「そっかー、銀次が聞いたらシッポ振って喜ぶだろうな」

「だと良かったんですけど…。まぁでも、それくらい、帰ってきてからでも出来ますし」


2人の前で落ち込んでてもしょうがない。

気持ちを切り替えようと2人に向き直ると、金一郎さんが何気なく私に言った。


「銀次に会いに行ってみたら?サプライズで」


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