*エトセトラ*
「も、もしもし?」

すごいタイミング…。

ビックリしながらも電話に出ると、『結衣?』といつもの先生の声。


「先生、まだ仕事なんでしょ?」

『いや、仕事早く終わったからもうホテル』

「えっ!?もうホテル!?」

もう仕事終わってたんだっ…!!ロビーで待ってる必要なかったんだ!!


私の過剰な驚きように先生が怪訝に返してきた。

『どうした?……ていうか、今家か?周りからいろんな声が聞こえる』

「えっ!?いや、家じゃなくて…」

同じホテルなんですけど…

ホテルに来たと伝えようとしたら、先生は私の言葉も待たず急に怒鳴り始めた。


『こんな時間にまだ外にいるのかっ!?早く家に帰れっ!!男が寄ってきたらどうすんだよっ!!』

「なっ…!!」

何でこんなに怒られてるのっ!?しかも、男が寄って来るって何っ!?


「ま、待ってくださいっ!!ホテルですっ!!ホテルに来てるんですっ!!」

『ホッ!!ホテルだあぁっ!?結衣っ!!!!誰とだよっ!!』

「違っ…!!」

私も焦ってちゃんと伝えられてないせいで、先生が変な誤解をしてる。このままだと暴走しかねない。


「誤解ですっ!!……だって、今日、誕生日だからっ!!」

『はあ?何言って…』

「先生の誕生日だから、いてもたってもいられなくて…」

『………』


誕生日、というフレーズに先生は考え込んでいるようで……



『………今日…俺の誕生日っ!!』

「今思い出したんですか?」

『俺としたことがっ!!すっかり忘れてたっ!!………こんな日に会えねえなんて!!』


先ほどの怒りはどこへやら、先生がうな垂れている様子が声の調子からすぐ分かる。

そんな様子にクスクスと笑いを浮かべながら、少し驚かせようとそのまま部屋に向かった。


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