*エトセトラ*
グッタリしながらケホケホと咳を繰り返していると、先生はまた何やら不穏な動きをし始めた。

今度は何…?

重い体で、思うように動けない。

その動きを目で追っていると、先生は私のふとんを引き剥がそうとしていた。


「ちょっ…何やって…」

「ん?着替えさせてあげる」

「やだっ…なんでっ…」

「だって結衣、汗かいてるから」

「やだやだやだっ…!自分でできますっ…」

「恥ずかしがるなって。結衣の体、何度も見てるし」


そういう問題じゃない。

でも、押しのけようにも、体に力が入らない。へなへなと腕を押してるだけだ。

ううっ…お願いだから、ゆっくり寝かせてほしい……

抵抗する体力が失せつつあると、先生は私の体を抱き起こし、ギュッと抱き締めてきた。


「結衣の体、熱い」


たぶん、先生のせいで余計に熱は上がった。息も乱れて、頭もガンガンする。

病人に対して、こんなに遠慮がないのも珍しいと思う。こんな時にまで、この強引さはいかがなものか。



「お願いだから…ゆっくり寝かせてください……」

「着替え終わったらな」

懇願する私に、先生はなぜか楽しそうにパジャマのボタンに手をかけていく。



結局私の予想通り、先生が来ると余計に疲れてしまった。熱が下がる気配は一向にない。

こうなるって思ってたけど…。


「結衣、早く治して」

「………」

そんな理不尽な言葉聞いて、さらにグッタリする。


ほんとに…もう寝たい…。

全身が脱力し先生の体にポフッと倒れこむと、私が甘えてきたと勘違いしたのか、先生は苦しいくらいにぎゅうぎゅうと抱き締め返してきた。


ああ…しんどい…くるしい…

起きたら、いっぱい文句言うんだから…


猛抗議しようと心に決めたところで、いよいよ私のまぶたは限界を迎え、ゆっくりと閉じていく。


そして、先生の唇が頬に優しく触れるのを感じながら、私は深い眠りへと誘われていった。











★end.★



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