*エトセトラ*
「彼女」を作ったことで、少しは効果があったように思う。

言い寄ってくる女が減った。サエコも時々纏わり付いてくるが、突き放す簡単な理由がある。


ただ、その風当たりが全部、彼女―――原田菜都に向いているらしいが。


そのせいかどうか知らないが、菜都は俺と一緒にいることをイヤがる。言葉にはしないものの、その表情は見てあきらか。


そこまでイヤがられると若干ムカつくが、俺もそれを責めることはしない。

彼女といっても、それらしいことは何一つしていないし、するつもりもないし。

連絡を取り合うこともしない。


形だけの「彼女」だから。


なので、唯一接点があるのは、昼休憩くらいだ。たまには一緒にいないと怪しまれるし、辻褄が合わないことも出てくる。

ただその理由だけで、昼休憩は一緒に過ごしていた。


ただ、それだけ。


ただ、それだけだったのに―――










何でこんなにラクなんだ……?


菜都と一緒に過ごすと、今まで味わったことのない不思議な感覚に陥った。

力が抜けて、穏やかで、居心地が良い―――…


特別な会話をしているわけでもない。

むしろ、何もしていない。

黙々とメシを食って、他愛もない話をして、チャイムが鳴ったら彼女は屋上から去る。


ただ、それだけなのに。


なんでだ……?

今まで俺の周りにはいないタイプだからか…?


そんな自分の些細な変化に疑問を持つうちに、もう一つ気付いたこと。

菜都を彼女にして数週間の間に、学校をサボる日数が徐々に減っていった。

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