*エトセトラ*
こうして、しばらくの間「彼女」と一緒に過ごして、分かったこと。


ビクビクと怯えた表情。

泣きそうで困った瞳。

弱々しく、たどたどしい声。

焦るとすぐに赤くなる頬。

クソ真面目。

言いたいこともグッと押さえ込み、我慢する。

自分から主張することも、行動することもなく。

とにかく、イヤなことでもその場の状況に耐え、諦め、そして、流される。



それが、原田菜都という女。



……………「彼女」にしたのは、間違いだったかもしれないと最近思い始めた。



気になるというか、心配というか。

気付いたら菜都はいつも何かに巻き込まれていて、とにかく危なっかしい。


今も。


放課後、健司の教室にいたら、菜都がクラスの女子共に嫌味を言われているのが聞こえた。

菜都も「うるさい」と一言言えばいいものを、何も反論できていない。

言われっぱなしだ。

おそらく、あのビクビクとした表情で「うぅ…」と困ってるんだろう。


……ったく。



「玲人、放っておいていいのか?」

健司たちが笑いを堪えながら聞いてくる。


「いいわけねえだろ」


一応、「彼女」なもんで、この状況は俺もいい気がしない。


教室から出て、すぐさま女子共から菜都を引き離すと、菜都もホッとした表情を浮かべながら俺に付いて来た。

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