*エトセトラ*
その帰り。

菜都との帰り道、先ほどの一連の出来事を思い出していた。


「他にも言ってくる奴いるのか?」

「ううん、特に…」

俺のせいで陰で色々と言われているはずだ。そのくせ、何も反撃できていないことが容易に想像つく。

聞き出そうとするが、菜都はふるふると首を振るだけ。

さらに、あろうことか、「自分の心配をしろ」とか「俺が優しい」とか、見当違いなことを言ってのける。



何なんだこいつは…。俺が優しい?どこが?

被害を受けているのは菜都の方だろ…しかも俺のせいだってのに…

お人よしすぎる……

ったく、こっちがどんだけ心配してるか分かってんのか…


呆れた笑いを見せる俺に対して、菜都は続けて言う。


「優しいよ。噂のような悪い人なら、こうして心配なんてしてくれないでしょ?こうして送ってくれたりも」


そして、ふふ、と微笑みながら俺を見上げた。


「ありがとね」




……………っ!


その瞬間、ズクン、と心臓に衝撃が走った。



―――なんだ、これ。


思わず心臓を押さえた。



「……久世君?」


怪訝な顔して覗き込む菜都から、反射的にバッ!と視線をそらしてしまう。



―――何なんだこれ……。



その時見た菜都の柔らかな笑顔は、俺の心臓に衝撃をもたらした。

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