*エトセトラ*
この頃になると、もう俺は菜都のことを「形だけの彼女」だと思えなくなっていた。

思う気もさらさらなかった。


初めて本気になった女。誰よりも菜都のことが最優先。

何でここまで惹かれたのか自分でも分からないが、徐々にその存在が大きくなっているのだからしょうがない。

今まで抱いたことがなかった感情に、戸惑うどころか、ばく進している。


なので、少しでも俺たちの邪魔をしようとする奴はとにかく気に入らない。



「まだ付き合ってるって言い張るの!?」

「言い張るもなにも、事実だ」


またもや教室で喚き散らすサエコが、納得いかなそうに俺に詰め寄る。

どうやら、俺が休日に菜都と一緒に過ごしていたことが原因らしい。


何なんだこの女。

てめぇに関係ねえだろ、と言ったところで素直に聞き入れる相手でもない。


サエコが目の前にいる時点で苛つき度は最高潮なのに、この言い草にキレそうになってしまう。

しかも、俺が付き合ってると言い張ったことで、菜都の表情が、げげっと歪んでいることにも、さらにムカついてしまう。

あからさまな落ち込みよう。

それにまた隣の席の男が何やら話し掛けているのを見て、さらにさらに頭にくる。


「おい菜都!!」

「は、はい…!!なんでしょーか!!」

「お前からもコイツになんとか言えよ!!」

つい声を上げてしまう俺に、菜都も分かりやすいほどビクビクと怯える。

その弱腰な様子に、サエコの勢いも止まらない。


「あんた、いつまで玲人にしがみついてる気でいるのよ!!」

「しがみついてるわけじゃ…」

「いい加減にしなさいよ!!」

「うっ…」


……ダメだ。菜都じゃ収拾できるはずがない。

なんとか言え、と求めた俺が悪い。

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