*エトセトラ*
これ以上、菜都の心をかき乱されたくない。

教室からサエコを連れ出し、近く目に入った視聴覚室に無理やり引き込んだ。



「てめぇ…いい加減にしろよ」

「だってっ…!やっぱり納得できないっ…!」

「お前の納得なんて一切関係ねえだろ」

「何でっ…、あの女が彼女なんて絶対嘘に決まってるのに…!」

「嘘じゃねえよ。俺の彼女は菜都って言ったろ。……つーか、何でいちいちお前に説明しなきゃいけねえんだよ」


確かにサエコの言う通り、最初は嘘から始まった。あの場面で唯一関わっていたサエコなら、咄嗟の嘘としか見えていなかっただろう。

でも、俺の中ではもう本当の彼女としか思えない。


「嘘を続けるのはあの女のせいでしょっ…玲人、何か吹き込まれたのっ…?弱みを握られたのっ…?」

「はあ?」

「絶対そうに決まってるっ…、あの女が何か言ったんでしょっ…」


泣きじゃくるサエコの思考は、あり得ない方向に向かっていた。


「私が、なんとかしてあげるっ…、玲人を解放するように、あの女にっ…」

涙声で綴るその言葉に、眉がピクリと動く。


―――なんとかしてあげる?



「ちょっと待て」

突然声色を変えた俺に、サエコが息を呑むのが分かった。黙って、俺を見つめ返している。


「俺の彼女に、何する気?」

「れ、玲人…?」


静かに怒りを纏いながら、サエコに歩み寄った。

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