*エトセトラ*
「言えよ。なんとかしてあげるって、一体何する気なんだよ」

「れ、玲人…」

怯えながら後ずさりするサエコを壁に追い詰め、ドンッと手をついた。

冷たい視線で睨み付けると、小さく震えているのが分かる。


「言っとくけど、容赦しねえから」

「な、に…?」

「例え女でも、菜都を傷つけたらただじゃおかねえ。ぶっ殺してやる」

「……っ…」

「分かったなら、もう二度と俺と菜都に近づくな」



怒りとともに静かに言い捨てると、サエコが「……何でっ」と泣きながら小さく呟き、ゆっくりと顔を伏せていった。


「何でっ、あの子なのっ…何でっ、私じゃだめなのっ…」

「勘違いすんなよ。俺はお前とどうにかなる気なんてさらさらないし、菜都と比べるまでもない」

「でもっ、私の方が玲人のこと好きだもんっ…」

「関係ねえよ。何と言われようが、菜都しかいらない。お前も、他の女もいらない。俺は、菜都しか欲しくない」

「玲人っ…」

唇を噛み締めながらサエコはしばらく泣き続けるが、それに構う気も起こらない。



「私のこと、見てくれる可能性はっ、ない…?」

「ない」

「……あの子、だけ…?」

「菜都だけ」

「…………」


最後にそう答えると、サエコは「……分かった」と小さく呟いて俺から離れた。


「もう分かった…。もう、構わないようにするっ…」

「…………」

「……でもっ、すぐには諦められないと思うけどっ…」


俺の思いが伝わったのかどうか分からないけど、サエコははそう言いきって、視聴覚室の扉を開けた。

「先、戻るからっ…」


そう言って視聴覚室から出て行ったサエコの後姿を見ながら、俺は大きな溜息を吐いた。


< 200 / 210 >

この作品をシェア

pagetop