*エトセトラ*
場所取りしていた砂浜に戻り、早速海に行こうと浮き輪の準備をしていると、和泉君が不可解そうに私を見てきた。


「モカ、なんだそれ」

「…え?それって?」

和泉君に目を向けるけど、その視線は私の顔ではなく、肩から下におりている。

うっ…。もしや…。

イヤな予感がするけど、分からないフリをして「なぁに?」と白々しく聞いてみた。

和泉君は少しだけ眉を寄せながら、私の全身を見ている。


お願いだから、指摘しないでほしい…。

そう心の中で願っているけど、和泉君は私の目の前に立ち、着ているTシャツを指でピッとはねた。


「これ、ジャマ」

「いや、その、日焼けするし…!!」

やっぱりTシャツ着てること指摘されてしまった!!

あたふたと照れながら言い訳をするけど、和泉君は有無を言わせぬ口調で「脱げ」と迫ってくる。


「脱げって…!!」

「だって、俺のために水着買ったんだろ?」

「い、いや…!!和泉君のためっていうか…!!」

確かに、和泉君を説得する時に水着を買ったとは言ったけど、そういう意味じゃない。

それでも和泉君はジリジリと迫ってくる。


「ご、ごめん!!やっぱり恥ずかしくてムリかも!!」

必死で逃れようと往生際の悪い言葉で抵抗すると、和泉君はフッと鼻で笑った。

「何を今さら」

「今さらって言われても恥ずかしいの!!」


そんな攻防戦を2人で繰り広げていると、休憩しに海からあがった麻美が私たちを見ながら呆れたように呟いた。


「あんたら、イチャついてないで早く海行きなよ」

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