*エトセトラ*
絶対、手に入れる。

そう強く想っているものの、今はまだその想いを伝えるべきじゃない。

おそらく、いや、間違いなく、浅野は俺のことを好きになってはいない。好意は持ってくれているだろうが、それが恋愛感情ではないことが分かる。


どうすっかなー…。浅野、超鈍そうだし…。

いっそのこと、好きだと言ってしまおうか。そうなると、必然的に俺を意識することになるはずだ。

そこから責めるのも、悪くないかもしれない…。


そんなことを考えながら、隣で勉強する浅野の横顔を見つめた。


すると、俺の視線に気付いた浅野が「ん?」と首を傾げた。パチパチと瞬きしながら、「どうしたの?」と聞いてくる。


そんなさり気ない仕草にも、心臓が締め付けられる。可愛くてたまらない。



何も返さずじっと見惚れていたら、次第に浅野が困惑の表情を浮かべ始めた。


「え、と…黒崎君?な、何…?」

「いや、……欲しいな、と思って」

「な、何が…?」

「そのうち教えてやるよ」


ダメだ。

やはり、今は言うべきじゃない。

浅野のことだから、色々考えすぎて、俺を好きになる前に逃げ出すかもしれない。


……もう少し、待つか。


「黒崎君…?」

「何でもない。じゃ、次の問題」

「う、うん…」


何事もなかったように進めると、浅野もそれ以上は追及してくることなく、問題集とにらめっこを始めた。

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