*エトセトラ*
起きる気配がない浅野を見つめながら、考えていた。


いつか、俺の想いに気付いてくれるのだろうか…。


日に日に浅野への想いは増していくが、何の進展もない。教室でも、それ以外でも、浅野のことを目で追ってしまうが、その視線に浅野は気付かない。


どうでもいい女は相変わらず寄ってくるのに、浅野は思い通りにならない。

いつも騒がれ疎ましく思っていた自分の容姿も、浅野に効くなら躊躇いなく大いに利用するが……おそらく、効かないだろう。


マジで勝算なしなんじゃ…。

笑えない。頭を抱えたくなる。


時折、俺がわざと身を寄せると、頬を赤く染めながら焦った様子をみせるけど…。

それはおそらく「俺」を意識しているというより、ただ単に男に免疫がないだけのように思える。


手強い…。


未だ起きない浅野を見つめながら苦笑した。こんな間近に手中に落とそうとする男がいるのに、ほんと、無防備によく眠る。


思わず、その可愛い寝顔に魅入ってしまう。

長い睫毛を伏せ、口元は幸せそうに弧を描いている。

白く滑らかな肌には髪がかかり、陽射しを受けてキラキラと反射する。



まずいな。


………触れたい。


思わず、手が伸びた。

柔らかく感触の良い髪を優しく梳きながら、その髪を耳にかける。


サラリと指で頬を撫で、引き寄せられるようにその頬に唇を落とした。


まずい……、たまらなく欲しくなる。


寝てる浅野に手を出すのもどうかと思うが…。


心の中で葛藤を繰り広げていると、寝ていた浅野が「……ん…」と身じろぎゆっくりと目を覚ました。


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