*エトセトラ*
「……起きた?」

浅野が目を覚まして、ホッとする自分がいた。

あのままだと、暴走していたかもしれない。


浅野はまだ寝惚けているのか、ぼうっとしたまま俺を見つめている。


「浅野?」

声をかけると、やっと俺を認識したのか、ガバッ!と勢いよく身を起こし、みるみる顔を赤くさせた。


「ご、ごめ…ごめんっ!!寝ちゃってた…っ!!」

俺に寝顔を見られたのが恥ずかしかったのか、手で顔を覆いながらあわあわと焦っている。


「大丈夫、俺しか見てないし」

「そ、そういう問題じゃ…!!」

「ここではいいけど、他の場所では無防備に寝ないで」

「そ、そんなっ…!!どこでも寝てるような言い方しないでよっ!」

恥ずかしそうに言い返す浅野に笑うが、かなり本心だ。

こんな浅野の姿、他の奴らには見せたくない。

情けない独占欲が胸を占める。



「私、……何かした?変なこと言ってた?」

「いや、何も…」


寝てる間のことを浅野が心配そうに聞いてくる。

というか、俺の方だ。何かした、のは。

眠る浅野の頬に、キスをした。


「よかった〜…」

俺の答えに浅野はホッと安堵しているが…、……黙っておこう。


そう心の内に秘めたところで、昼休憩の終わりを告げる予鈴が鳴った。


いつの日か、浅野を手に入れた時、思い出話として話せたら。


この先もずっと、こうして浅野の隣にいることを願って…。


そんな将来に思いを馳せながら、勉強道具を片付ける浅野を見つめていた。


< 88 / 210 >

この作品をシェア

pagetop