君の背中に
「伶く…」

それは私には
ショックが大きすぎたのかもしれない。


伶くんによく似たその人の
隣に女の人がいた。

遠目でよく分からなかったが
綺麗な人に見えた。


「嘘だ…」

1人で呟いた。
美術室はすぐそこ。
泣いている場合じゃなかった。

美術室のドアを開けた。

「遅れてすみません」

本当は遅れてはいない。
むしろ早い方だった。

「全然大丈夫だよ、
 忙しかったんでしょ?」

部長がその通りの言葉をかけてくれる。

「まだみんな来ないね、
 準備しよっか」

あれは伶くんじゃない。
きっと違う人。
そんなこと…信じたくないから。

現実は残酷だとしても。

辛い顔を先輩や友達に
見せないことに必死だった。

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