君の背中に

冬の記憶

ごめん、と言われても許せなかった。

じゃあそんなことしないでよ。

走って教室へ戻った。
逃げるように。

涙が出てきた。
怖かった。


「綾音、泣くな!」

席に着いた私への里央からの第一声。

「…どうしたの?」

何も言えなかった。

今日は、伶くんにちゃんと言わなきゃ。

でも、こんな気持ちで言えるかな。
急に不安になってきた。

当たり前といえば、当たり前なのかもしれない。
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