君の背中に
「こんばんは」

「どうした?」

言うしかない。
もう逃げられない。
里央は窓から見ているんだろうか。

「ダメモトでいきなりなんですけど」

里央の部屋の窓を見上げた。
カーテンは閉まっている。

「伶くんのこと、好きです」

里央の部屋の窓をまた見上げる。
誰も見てはくれていないとしても。

冷たい沈黙。
この空気を誰かが壊してくれたらいいのに。
逃げてしまいたかった。

沈黙は長かった。
1秒がさっきの3分に感じられるぐらい。

頬に流れる冷たい水にまた風が当たる。



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