異世界にて

「お前が、『1人にしないで』っていって、俺の手を離さなかったからだろ?」


「覚えてないのか?」とニヤッと笑うダルク。

途端、菖蒲の顔は沸騰したようにカァーッと赤くなる。

そんな菖蒲を見て、ダルクは“寝ながらだけど”と心の中で付け足す。


「と、とんだご迷惑をおかけしました…」


バッとその場で土下座する。


「ま、俺寝るとこなかったし、丁度良かったからいいんだけど」


ダルクはちっとも寝床に困っていなかった。

ケイファの部屋のベッドで寝るつもりだったからだ。

…もちろん、ケイファを部屋から追い出して。


気になったのは、ベッドに寝かす少し前。

きゅっとダルクの服を握りしめ、一筋の涙を流したのだ。
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