異世界にて

 僅かだが、肩が震えている。

サクラは満足そうにフン、と鼻で笑った。


「くくく…」


「え?」


サクラは菖蒲が泣いているのかと思っていたが、違う。


「くくっ。ははははは!」


菖蒲は…笑っていたのだ。
しかし、その瞳は――海の底よりも、冷たく、痛い。


「いい迷惑…?まったくだ」


「な…」


「おい女。それはまったく同感だ。何故、おれがこんなとこに来なくちゃならない?」


その口調は…菖蒲とは思えない程。

男の子のようになった、としか説明のしようがない。


「こんなとこ、来たくなかった…!」


苦しそうな顔をして、誰にも聞こえないような、か細い声で呟いた。
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