異世界にて

 そう言って菖蒲は楽しそうに笑った。


「っ!」


サクラは悔しそうな顔を浮かべ、そのまま走り去ってしまった。


「……つまらんな」


菖蒲はぽつりと呟くと、悲しげに瞳を揺らす。


「…優莉、優希…。おれの居場所は、お前たちのとこにしか…」


菖蒲は突然、ふらつき壁に寄り掛かる。

辛いのか、顔は真っ青。手で顔を覆い、肩で息をしている。


「…大丈夫…」


まるで、自分に言い聞かせるように。

しかし、他人に話し掛けるように喋った。

やがて、菖蒲はフラフラと立ち上がり、部屋の中へ入っていく。

その姿はもう、先程までとは違い、いつもと同じだった。
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