異世界にて

「…遅い」


ダルクはガタッと立ち上がり、スタスタと歩き出した。


「ダルク?何処行くの?」

「アイツんとこ。遅いから呼んでくる」


バタン、とドアを閉め、苛つきを隠せないまま菖蒲の部屋へと向かう。

……只今、午後8時。

夕飯の時間は、とっくに過ぎている。


「ったく…」


それ故か、ダルクはいつにも増して、機嫌が悪い。


ダルクは菖蒲の部屋の前に立つと、ドアをノックする。


「……………」


しかし、何も反応がない。


「…おい。入るぞ?」


一応尋ねたから、無断ではない筈…。

そう自分に言い聞かせ、ゆっくりと部屋に入る。

部屋の中は電気がついておらず、物音一つしない。
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