異世界にて

 ダルクが呆然と菖蒲を見つめる。

菖蒲は、ふと顔を上げ、「ごめん」と苦笑した。


「は?」


「あ、いいえ。なんでもありません」


菖蒲は「行きましょうか」とダルクを促したが、ダルクは動かない。


「? ダルクさん?」


「おい…。なんで着替えてねぇんだよ」


菖蒲はキョトン、とすると、自分の服装を見つめた。


「あ…」


まだ、私服のままだった…。

そういえば、すぐに寝てしまったため、この部屋もよく見ていない。


「すいません…」


「…いや、もういいや。早く飯食おう」


「…はい」


菖蒲はしゅん、と頭を下げ、とことことダルクの後ろを歩く。

そんな菖蒲に、ダルクは声を掛けた。
< 44 / 63 >

この作品をシェア

pagetop