異世界にて
「大変だね…」
「ううん。いつも3人だったから、平気だったよ」
菖蒲はふんわりと微笑むと、話を逸らす。
「あの……、明日あたり………」
この世界を、案内してくれませんか?と、菖蒲が問おうとすると、声が制止する。
『ダメだ。万が一、お前がこの世界の人間じゃないとばれたらどうする。何をされるか、わからないぞ』
「……なんだ」
ダルクは若干不機嫌そうに、菖蒲を見る。
「あ、ううん。なんでもない」
菖蒲は両手で手を振り、「あはは」と苦笑した。
「……なんだそれ」
ダルクは不思議そうな顔をしながらも、視線を窓の外へ逸らす。
菖蒲もつられて見てみれば、星はひとつも見えない。
――豪雨が来る、予感がした。