異世界にて
「おいおい……そりゃあ…」
「いいから黙れ。絶対に部屋に入れるな。いいか、命令だ」
「……わかったが、せめて飯は食え」
ぐっと顔を近付け、怪しく笑う。
……震えてない?
さっきまであんなに震えていたのに、今じゃまったく震えていない。
「そこまで心配してくれるのなら、部屋の前に置いておいてくれ。気が向けば食べる」
菖蒲はそれだけ言うと、ガバッと布団を被り、それきり喋らなくなった。
これ以上はもうムリだと判断したダルクは、ため息を噛み殺して部屋を出る。
「…………すまない」
その時、か弱い声で、菖蒲がそう言ったのが聞こえた。