〜初恋〜アナタに溺れる
お酒を飲みながら久しぶりに、ゆっくりと過ごしていた。

穏やかな時間。

最近は猛のことばかり考えて、思い出に浸ってた私。

今、こうして健哉と向き合って笑顔で言葉を交わす。

こんなにも満ち足りたものだったなんて。

忘れてしまうところだった。

今日この時間があって良かった。

本当にこの時は心からそう思ってたのに。

ずっと変わらないままだと思ってた。

だけど…


「あっ…健哉じゃん!」

私の背後から低くて存在感のある声がした。

背中が一気に熱くなるのが分かって、ドキンと心臓が跳ねたのを感じて…

どうしようもなく罪悪感を覚えた瞬間。

「おー、猛。おまえ一人?」


ほら…

やっぱりね。

声の主は紛れも無く猛で。

私はこの場をどう切り抜けるか、必死で頭を回転させた。

「あぁ。ここには大抵一人で来るよ。健哉は…あ、彼女?」

いまだ私の背後にいる猛はその彼女が自分の知ってる女だとは気づいていない。

それが…少し残念にすら思った。

後ろ姿で分からないんだ…。

そう思うとどこかでショックを受ける自分。

「紹介するよ。たぶん懐かしいぜ。」

フフッと鼻で笑った健哉が私と目を合わせた。





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