〜初恋〜アナタに溺れる
『…大丈夫だよ。何時に?』

『5時すぎには行けると思う。また連絡するよ。』

『分かった。それじゃ…』

電話を切ったあと、耳に残る猛の声が私の神経を麻痺させる。

両手で頭を抱えてデスクに突っ伏した。

もう、なんなの。

私の全神経が猛に奪われそう。

それくらい…今、参ってる。

ホントにどうにかなりそうだよ。




その後はどう仕事をしたか、よく覚えていない。

上の空のまま、でも何とかその日を乗り切った…

そんな感じだ。

約束の5時すぎまであと数分。

ある意味素晴らしいタイミングで迎えがやって来た。

お客様と商談する一階のフロアにいた私。

そこに突然現れたのは、今もっとも会いたくない人。

と、言うより今ここに来て欲しくない人の姿…


「…健哉?どう…したの?」

スーツのジャケットを左肩からブラリと下げた健哉がいた。

いつも優しい瞳は、今何を考えてるか検討もつかない。

今なぜこのタイミングで?

不安と恐怖のような複雑な思いが駆け巡る。

私の目の前で、立ち止まった健哉。

「どうした?そんなに驚くか?」

首を傾げてフッと笑った。





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