〜初恋〜アナタに溺れる
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見てしまった。

偶然…。

俺が立ってる位置からちょうど見えた、二人の姿。

ここは、フロアがすべてガラス張りだ。

だから、丸見えなんだ。

健哉と…麻乃。

健哉が向きを変えた瞬間、近くにあった自販機の裏に隠れた。

なんで…俺、苦しいんだ?

ふと、ショックを受けている自分に気づく。


やっぱり…昨日の感情は本物だったのか?

酒のせいでも、懐かしい思い出のせいでもない。

ずっと昔に蓋をしたはずの想い。

その蓋が何かのきっかけで、開いてしまった。

でも…伝えるわけにはいかない。

この気持ちはまた蓋をしなければ。

俺は何事もなかったように、笑顔を作り扉を開けた。

その音と共に、麻乃の視線が俺に向く。

「こんばんは。急に電話してごめんな?」

優しい笑顔を見せる麻乃。

ズキッと痛みが走る。

「いいえ。それで、結婚式の件って?」

右手でソファに座るよう促す。

「あぁ。式で使う選曲のことで…」

「なんでもいいのよ。例えば…二人の思い出の曲とか、好きな曲とか、」

どうしても、話す麻乃の唇に目がいってしまう。

小さくて、形のいい…柔らかそうな唇にうっすらとグロスが艶めいて…

さっきの情景がフラッシュバックする。




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