〜初恋〜アナタに溺れる
それからずっと黙ったままの猛。

なんとも言えない空気が辺りを包む。


その時、ふと昨日の事を思い出した。

抱きしめられたんだっけ…

この腕に…

あーっ!!!!もう!

だから、ダメなんだって。

「コーヒーでも…飲む?」

この雰囲気を打破しなくちゃ。

「…あ…あぁ」

私はすでに立っていたから、今…猛の視線は上目遣いに…

しかもボーッとしていたせいで、目がトロンと虚だ。

ヤバイ…

ヤバイってその顔。

自分の顔が熱くなるのを感じて、いそいそとその場を離れた。

新しく仕入れたばかりのコーヒーメーカーに豆を煎れて…

カップに注がれるコーヒーを見つめてた。

「はぁ…」

小さな溜息をついた時だった…

またあの感覚が私を包み込んで

耳元に…首筋に…熱い吐息が触れる。


「た…ける…?」

震えてるであろう声で、抱きしめてる彼の名前を呼ぶ。

「……ごめん…何やってんだろ…」

「どう…し…て?」

今、猛がどんな顔をしてるか何を考えてるか、全くわからない。

だから、教えて?

どうしてなの?

何を考えてこんなことを?




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