犯人ゲーム
瞬間、わざとなのだろうけど空気を読まないチェシャ猫の声が室内に響いた。
『ん~、これはこれは「犯人」大ピンチじゃないかなぁ?』
相変わらず姿は見せず、けれど声は喜悦を孕んでいた。
「僕さ、光二は多分生き残るもんだと思ってた」
「ん~。なんとなくわかるなぁ。それ」
どこか光二は自分達とは違う。そんな幻想めいたイメージが光二にはついていた。
良い意味でも。逆に悪い意味でも。
だから、なのか。
光二の死。と言うのが他のクラスメートの死より各段に受け止められないのは。
「けど。現実なんだよ。こーじも他の皆ももういない」
望美の手が陽一の頬に置かれる。
暖かくて、くすぐったい。
『さてさて、楽しい楽しいゲームももうすぐ終わりだね。悲しいね♪
「犯人」は大ピンチだけどまだ諦めないで頑張って逃げきろうね♪』
一人愉しげなチェシャ猫の声は無意味に不愉快を助長させた。
けれどそれ以降不愉快な電子音声が聞こえる事はなかった。